熊本地方裁判所 平成8年(行ウ)5号 判決 1997年9月10日
熊本県玉名郡岱明町大字中土西分七四五番地一
原告
有限会社昌栄産業
右代表者代表取締役
中原眞美榮
熊本県玉名市繁根木七二番地三
被告
玉名税務署長 高濱義昭
右指定代理人
大須賀滋
同
畑中豊彦
同
樅木孝雄
同
白浜雅春
同
緒方登志光
同
高野潔
同
池田和孝
同
橋本洋一
同
河口洋範
同
竹本龍一
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一原告の請求
被告が、原告の平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの課税期間(以下「平成三年度課税期間」という。)、平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの課税期間(以下平成四年度課税期間」という。)及び平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの課税期間(以下「平成五年度課税期間」という。また、平成三年度課税期間、平成四年度課税期間及び平成五年度課税期間を併せて「本件課税期間」という。)の各消費税について、平成六年三月三一日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定処分のうち、平成三年度課税期間について課税標準金額一億五〇四五万五〇〇〇円、税額九〇万二七〇〇円を超える部分、平成四年度課税期間について課税標準金額一億七〇一二万六〇〇〇円、税額一〇二万七五〇〇円を超える部分及び平成五年度課税期間について課税標準金額一億三〇五一万一〇〇〇円、税額一五六万六一〇〇円を超える部分並びに本件課税期間についての過少申告加算税賦課決定処分の全部を取り消す。
第二事案の概要
一 争いのない事実
1 原告に対する課税処分の経緯及び原告に対する課税処分等
(一) 原告は、電子部品組立製造業を営む有限会社である。
(二) 原告は、九州松下電器株式会社(以下「九州松下」という。)の下請業者として、電子部品関係の組立加工を行っており、原告が組立加工を行った電子部品は、すべて九州松下へ納入されている(以下、原告と九州松下との間の右取引を「本件取引」という。)。本件取引は、原告が、日本国内において、事業者として独立の立場で、その事業として、九州松下との間で継続的に行っている取引である。
(三) 原告は、被告に対し、平成三年五月二七日、平成三年度課税期間の消費税について、課税標準金額を一億五〇四五万五〇〇〇円、納付すべき税額(別表3記載の「差引税額」にあたる。以下同じ。)を九〇万二七〇〇円、平成四年五月二五日、平成四年度課税期間の消費税について、課税標準金額を一億七〇一二万六〇〇〇円、納付すべき税額を一〇二万七五〇〇円、平成五年五月一〇日、平成五年度課税期間の消費税について、課税標準金額を一億三〇五一万一〇〇〇円、納付すべき税額を一五六万六一〇〇円として、いずれも法定申告期限内に、確定申告書を提出した。
(四) 玉名税務署法人課税部門の外薗秀夫上席国税調査官及び小野勇治上席国税調査官は、原告の法人税及び消費税の調査のため、平成六年二月四日、原告の事業所へ臨場し、原告の代表者中原眞美榮及び関与税理士青木庄七と面接し、事業内容等の聴取及び提示された帳簿書類等の調査(以下「本件税務調査」という。)を行った。そして、両調査官が本件取引に係る請求書等を調査したところ、原告は、本件課税期間における消費税の課税売上高(消費税の課税対象となる資産の譲渡等の対価の合計額をいう。)として、原告が九州松下に納入した電子部品の販売価格から、九州松下が原告に対して支給した原材料の支給代金を差し引いた額を計上し、かつ、本件課税期間の消費税について、いずれも消費税法三七条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例。以下「簡易課税制度」という。)の規定を適用して納付税額を算出していることが判明した。
(五) 被告は、右調査に基づき、原告が本件課税期間の消費税について課税標準額を過少に申告していたとして、平成六年三月三一日付で平成三年度課税期間の消費税について、課税標準金額を一一億五二九五万九〇〇〇円、納付すべき税額を二六五万六〇〇〇円、平成四年度課税期間の消費税について課税標準金額を一一億九七八五万六〇〇〇円、納付すべき税額を二九五万六九〇〇円、平成五年度課税期間の消費税について、課税標準金額を七億七一六二万四〇〇〇円、納付すべき税額を二一九万四五〇〇円に更正する旨の処分(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(平成三年度課税期間につき二一万七〇〇〇円、平成四年度課税期間につき二三万六五〇〇円、平成五年度課税期間につき六万二〇〇〇円)(以下、「本件賦課決定」という。また、本件更正と本件賦課決定とを併せて、「本件課税処分」という。)を行い、原告に通知した。
(六) 原告は、平成六年五月三〇日、被告に対し、本件課税処分を不服としてその取消しを求め、異議申立てをしたが、被告は同年八月二五日付で、右異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(七) 原告は、平成六年九月二一日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同審判所長は、平成七年一二月二二日付で、右審査請求を棄却する旨の裁決をした。
2 消費税の取扱について
(一) 消費税法四条一項によれば、「国内において事業者が行った資産の譲渡等」が消費税の課税対象である。
(二) 右にいう「資産の譲渡等」とは、同法二条一項八号により、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいうものである。
(三) また、同条にいう「資産の譲渡」とは、資産につきその同一性を保持しつつ、他人に移転させることをいうものとされており〔昭和六三年一二月三〇日付間消一-六三消費税法取扱通達(以下「昭和六三年通達」という。)五-二-一〕(乙四の三)、「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいうものとされている(昭和六三年通達五-一-二)。(乙一の七)
(四) そして、事業者が外注先等に対して外注加工に係る原材料等を支給する場合において、その支給に係る対価を収受することとしているとき(原材料の支給が有償支給である場合)は、その原材料等の支給は、対価を得て行う資産の譲渡に該当するが、有償支給の場合であっても事業者がその支給に係る原材料等を自己の資産として管理しているときは、その原材料等の支給は、資産の譲渡に該当しないとされている。この場合には、有償で原材料の支給を受けた外注先等においては、当該原材料等の有償支給は課税仕入れとはならず、また、原材料等の支給を受ける事業者から収受する役務の提供の対価としての加工賃等が課税の対象になる。(昭和六三年通達五-二-一三)〔甲一、二、乙一の八(なお、乙一の八においては、五-二-一六となっている)〕
(五) 更に、事業者が原材料等の支給を受けて加工等を行った場合の基準期間における課税売上高に算入される国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額は、原則として、(1)製造販売契約の方式により原材料等の有償支給を受けている場合は、加工等を行った製品の譲渡の対価の額となり、(2)賃加工契約の方式により原材料等の無償支給を受けている場合は、加工等にかかる役務の提供の対価の額となるとされている(昭和六三年通達一-四-三)。(乙一の五)
3 納付すべき税額等について
九州松下から原告に対する原材料の支給が有償支給であり、また、九州松下が右原材料の自己の資産として管理しておらず、本件取引において、原告が九州松下から支給された原材料を組立てることによって加工した電子部品を再度九州松下に譲渡することが、消費税法四条一項の「資産の譲渡」に該当するとすれば、本件課税期間における消費税の課税売上高は別表3の各更正額欄のとおりとなり、その結果、簡易課税制度の適用がないことになって課税標準額、納付すべき税額も同各更正額欄のとおりとなり、過少申告加算税額も別表1の各過少申告加算税額欄のとおりとなる。
二 原告の主張
1 本件取引について
(一) 本件取引において、九州松下は、原告に対して原材料を支給するにあたって有償支給の形式をとっているが、これは、全く形式的なものであり、原告は対価の収受もしておらず、会計帳簿上も「仕入れ」や「売上げ」として記載していない。また、九州松下作成の請求書(乙二)は、原告の現場主任者が単に受領しているに過ぎず、原告作成の請求書(乙三)は、金銭の動きのない全く形式的なものにすぎない。なお、乙二及び乙三は本件課税期間についてのものではない。よって、九州松下から原告に対する原材料の支給は、有償支給ではない。
(二) また、九州松下から原告に対する原材料の支給が有償支給であるとしても、九州松下は、右原材料は自己の資産として管理している。
2 本件税務調査について
(一) 原告は、本件税務調査の際、被告の調査担当者から次のような指摘を受けた。
(1) 消費税について
九州松下から原材料の支給が有償となっているので、原告が九州松下に納入する電子部品の価格を含めて計算すると、基準事業年度の課税売上高が五億円(平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度では四億円)を越えるので、簡易課税制度の適用はない。
(2) 法人税について
<1> 平成五年三月三一日現在、九州松下から受けた原材料の棚卸しが、一〇四〇万二〇三四円漏れている。
<2> 同じく、仕掛品一三三万五九四四円が漏れている。
(二) そして、被告の調査担当者から消費税と法人税について修正申告書を提出して欲しいと要求されたが、後日、上薗秀夫上席調査官から、原材料の一〇四〇万二〇三四円については、九州松下が自己の資産として管理しているので、これについては修正の必要はないとの説明を受けた。
(三) そこで、原告は、法人税については平成六年三月二四日に修正申告書を提出したが、消費税については納得できないので、修正申告書の提出を拒否した。
3 本件課税処分の違法性
(一) 原告は、九州松下から原材料の有償支給を受けていないので、原告が加工を行った製品である電子部品を九州松下に譲渡する場合の課税標準は、原告から九州松下に対する右電子部品の販売価格から九州松下が原告に対して支給した原材料の支給代金を差し引いた額である。
(二) 仮に、右原材料の支給が有償支給であるとしても、九州松下は、原告に支給した原材料を自己の資産として管理しており、このことは、被告が、本件税務調査の際、右原材料について原告の所有でないことを認めていたことに照らしても明らかである。よって、原告が加工を行った製品である電子部品を九州松下に譲渡する場合の課税標準は、原告から九州松下に対する右電子部品の販売価格から九州松下が原告に対して支給した原材料の支給代金を差し引いた額、すなわち、原告が九州松下から収受する役務の提供の対価としての加工賃等に相当する部品である。(なお、原告は、「原告は、九州松下から支給を受けた原材料を自己の資産として管理していないから、資産の譲渡には該当しない。」旨主張しており、右の主張の趣旨は不明確であるが、右の主張は昭和六三年通達五-二-一三に依拠するものであると考えられることからすれば、右に記載したような趣旨のものであると考えられる。)
(三) 以上によれば、原告の平成三年度課税期間の課税標準金額は一億五〇四五万五〇〇〇円、平成四年度課税期間の課税標準金額は一億七〇一二万六〇〇〇円、平成五年度課税期間の課税標準金額は一億三〇五一万一〇〇〇円である。したがって、本件課税処分は、原告の本件課税期間の消費税の課税標準額をいずれも過大に認定したものであり違法である。
三 被告の主張
1 本件更正処分の適法性
(一) 本件課税期間における本件取引において、九州松下は、原告に対し、電子部品の原材料を供給するについて、支給した原材料の代金に消費税額を加算した金額で原材料の代金を請求しているから、九州松下と原告との間で、原材料が売買されていることは明らかである。また、原告は、加工した電子部品を九州松下に納入するにあたり、電子部品の売買代金に消費税額を加算して請求している。このように、原告が製造販売方式(支給を受けた原材料について当事者間で売買がされている方式)により原材料の有償支給を受けている場合には、加工等を行った製品である電子部品の譲渡が資産の譲渡となる。
(二) 原告は、九州松下が原材料を支給するにあたって有償支給の形式をとっているものの、実際には原告は対価の収受をしていないとして、原材料の有償支給が行われていない旨主張するが、本件取引において売買代金の現金決済が行われていないことの一事をもって資産の譲渡が存在しないと断定することはできない。実際には、本件取引における各売買代金の決済は、原告が九州松下へ納入した電子部品の売買代金債権と九州松下が原告に支給した原材料の売買代金債権と対当額で相殺することによって行われており、九州松下においては、右のとおり売買代金が決済されているものとして会計帳簿上の処理も行われている。また、九州松下は、原告への原材料の有償支給を資産の譲渡として計上し、消費税を納税している。よって、九州松下から原告に対する原材料の支給が形式的なものに過ぎないとの原告の主張には根拠がない。なお、原告は、乙二及び乙三が本件課税期間のものではない旨主張するが、乙二及び乙三に記載れさたような代金処理は、本件課税期間においても行われていたものである。
(三) また、原告は、九州松下が原告に対して支給した原材料を自己の資産として管理しているから、原告に対する課税の対象は、役務の提供の対価としての加工賃等てある旨主張するようであるが、本件取引において、九州松下は、原告に支給した材料を自己の棚卸資産として計上しておらず、かえって、原告が支給された材料の管理をしているのであるから、九州松下が原告に支給した原材料を自己の資産として管理しているとはいえない。なお、九州松下は、原告に対し原材料の在庫の報告を求めているが、これは、下請代金支払等遅延防止法四条二項一号の規定によって、原告から納入された電子部品に未だ使用されていない部分の原材料の支給代金を九州松下が原告に対して請求することが制限されているため、未使用の原材料の数量を確認するためにその報告を求めているに過ぎず、右在庫報告を求めている事実をもって、九州松下が在庫の管理をしいるということはできない。
(四) 更に、原告は、被告の調査担当者が原材料の棚卸し漏れについて、修正申告の必要がないと説明したことをもって、被告が原材料について原告の所有でないことを認めた旨主張するが、被告担当者が右のような説明を行ったのは、原告が九州松下から有償支給を受けた原材料の仕入れ金額が所得金額の計算上損金として計上されていなかったため、棚卸資産と損金である仕入れ金額の双方を計上しないまま処理しても、その双方を計上した場合と比較して、当該事業年度の所得金額に差異を生ずることはなく、国税通則法一九条の修正申告の要件に該当しないからであって、原告の主張は事実に反している。また、原告は、九州松下から原材料の仕入れ及び九州松下に対する電子部品の売上げ等を自らが帳簿処理していないこと、もしくは、その帳簿処理の是正の指導がなかったことをもって、九州松下への電子部品の納入が資産の譲渡にあたらないことの根拠として主張しているが、仮に、右のような事実があったとしても、右電子部品の納入が「資産の譲渡」に該当しないことの根拠にはならず、原告の右主張は失当である。
(五) したがって、本件取引のうち、原告が支給された原材料を組立することによって加工した製品である電子部品を九州松下に譲渡することは、消費税法四条一項の「資産の譲渡」に該当し、本件課税期間における消費税の課税売上高は、原告が九州松下に納入した電子部品の販売価格の合計となる。よって、本件更正は適法である。
2 本件賦課決定の適法性
前記1のとおり本件更正は適法であり、また、納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正前の税額の基礎とされなかったことについて、国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条一項及び二項の規定に基づいてなされた本件賦課決定は適法である。
四 争点
本件課税処分の違法性
1 本件取引において、九州松下から原告に対する原材料の支給は有償支給であるか否か。
2 九州松下が原告に対して支給した原材料を自己の資産として管理しているといえるか否か。
3 本件課税期間における消費税の課税対象である課税売上高(消費税の課税対象となる資産の譲渡等の対価の合計額)。
第三当裁判所の判断
一 本件取引において、九州松下から原告に対する原材料の支給は有償支給であるか否かについて
証拠(乙二、三、五)及び弁論の全趣旨によれば、九州松下においては、本件取引に関する契約が締結されてから現在に至るまで、九州松下が原告に対し電子部品の原材料を供給する場合、原告に原材料を引き渡した段階で、会計帳簿上売掛金として処理し、また、原告から電子部品が納入された場合、九州松下が原告から電子部品の引渡しを受けた日に買掛金として処理していること(乙五)、九州松下は、原告に対し原材料を供給するにあたって、支給した原材料の代金に消費税額を加算した金額で原材料の売買代金を請求し、原告は、支給を受けた原材料を加工した電子部品を九州松下に納入するにあたって、電子部品の代金に消費税額を加算した金額で電子部品の売買代金を請求していること及び右の各売買代金の決算は、原告が九州松下へ納入した電子部品の売買代金債権と、九州松下が原告に支給した原材料の売買代金債権とを対当額で相殺することによって行われていること(乙二、三)がそれぞれ認められる。
以上によれば、本件取引における九州松下から原告に対する原材料の支給は、九州松下が原告からその対価を収受しているのであるから、有償支給であるということができる。
なお、原告は、原告が右原材料の支給について帳簿上仕入れとして処理していないこと、もしくは被告の調査担当者からその帳簿処理の是正の指導がなかったことをもって、右原材料の支給は有償支給ではない旨主張するが、右のような事情は右原材料の支給が有償支給ではないことの根拠となるものではなく失当である。
二 九州松下が原告に対して支給した原材料を自己の資産として管理しているといえるか否かについて
証拠(乙五、六、七)及び弁論の全趣旨によれば、九州松下は原告に支給した原材料を自己の棚卸資産として計上しておらず、右原材料の支給を資産の譲渡として計上して消費税を納税していること(乙五)、九州松下と原告との間で交わされている「有償支給先支払要求表」(乙六)は、平成三年ころから現在に至るまで、空欄となっている項目全てについて原告が手書きで数字等を書き込み、これを九州松下に持参しているものであること(乙七)が認められる。なお、本件取引に関する契約では、九州松下が原告に支給した原材料の所有権移転時期は代金を支払ったときとなっており、また、右原材料に係る保険契約を九州松下が締結しているが、これらはいずれも売掛金債権を保全する目的等のためにとっている措置であると認めることができるし、九州松下は原告に対し原材料の在庫を報告させているが、これは、下請代金支払い等遅延防止法四条二項一号の規定によって、九州松下が原告に支給した原材料のうち、原告が九州松下に納入した電子部品の原材料として未だ使用されていないものがある場合、右の原材料の支給代金を九州松下が原告に対して請求することが制限されているため、未使用の原材料の数量を確認する必要があるためであると認められるので、これらの事情をもって、九州松下が原告に支給した原材料の在庫管理を行っているということはできない。よって、九州松下が原告に対して支給した原材料については、九州松下がこれを自己の資産として管理していると認めることはできない。
三 本件課税期間における消費税の課税売上高(消費税の課税対象となる資産の譲渡等の対価の合計額)について
以上認定した事実によれば、本件取引において九州松下から原告に対する原材料の支給は有償支給であり、原告と九州松下との間の本件取引は製造販売契約の方式によるものであるから、原告が九州松下に対し電子部品を譲渡することは、消費税法四条一項にいう「資産の譲渡」に該当し、本件課税期間における消費税の課税売上高は、原告から九州松下へ販売された電子部品の販売価格の合計額となるということができる。
四 結論
以上によれば、本件課税処分には何ら違法な点はないのであるから、原告の本件請求には理由がない。
よって主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 杉山正士 裁判官 相澤哲 裁判官 金地香枝)
別表1 課税の経緯表
一 平成三年分
<省略>
二 平成四年分
<省略>
三 平成五年分
<省略>
別表3 納付税額等表
<省略>